忍者ブログ
“False Island”E-No.1347の周囲を彷徨う霧の末端。 水芸考察以外は基本行き当たりばったり進行中。
[42]  [41]  [40]  [39]  [38]  [37]  [36]  [35]  [34]  [33]  [32
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

滑り込み参加再び、参加者イベント『Scent of Brine』
前回同様ログ転がし。


被監視者と銀灰猫の関係は此処参照と手抜きしつつ。
……因みに同主催者による前回イベント『Blanket of Night』
参加ログ此の辺に。
被監視者もとい野郎もとい水瀬禮嗣の現状も参加ログ補完参照で。


今回過去の夢という形でディエに語らせた中にある『軸(≒異世界)』の概念、

決して互いに交わる事も触れる事も無いように上下縦横無尽に張り巡らされた無数の糸

……というのを想像するのが一番近い形、だとは思う。ひとつの糸がひとつの軸。
そして個々の軸に定められた名に込められた力が周辺の軸に影響を与えているという設定。
因みに禮嗣やディエが生きる軸は『豊穣』。軸内にある豊穣の国の名と偶然だが一致。
周辺軸の豊かな恵みはこの軸が健やかなればこそであり、崩壊すれば悪影響も。

そして原初種族トランズヴァイヤ……名称は『transfer』のもじり。
禮嗣達の乗った“ネギエ”は帆船だったが、飛行機や大型馬車に飛空挺や豪華客船、
果ては巨鳥や龍(竜)の姿の者も。UFOなんて姿の人もいるかもしれない。
原初種族の名は伊達ではなく、不死ではないが遥かに長命。
語られた『望む誰かの為という条件を満たせば自在に軸越え可能』という特殊能力の他にも、
『招き入れ運んだ客人の存在を“記録”として己の中に保管する』特殊能力も有している。
今回禮嗣が帆船ネギエの乗船2度目(過去に虹の国へ向かう為に乗っている)なのも、
ネギエが己の中に保管されている禮嗣の記録に基づいて優先的に迎えに行った為らしい。

……という設定を零しつつ。
灰色部分は本来の結果上で小文字装飾されていた部分(ディエの心情)。




--------

「……本当にこの船で合ってるんだろうな」
「疑うなら己で先に向こう行ってりゃええやろ、俺はコレ使うしか手段無ぇっつの」
「お前の監視役が先に現地到着して何をしてろと」
「んな事知るかいな」


……ああ、これは夢だ。
この島に来る為に、あの船に乗った時の夢。
だが、何故今頃になってこの夢を……。

俺の名はディエス・イラ・メルクリウス。面倒な名だからディエと呼ばせてる。
とある軸――他なる者は異世界とも言う――に存在する、豊穣の国と呼ばれる島に存在するモノ。
この島にいる間は二尾持ちの銀灰色の猫の姿を崩す事は滅多に無いが、
あの国の中ならば『月妖』と呼ばれる、耳の変わりに触覚を持つ人型種族を真似る事が多い。
……どちらも、仮の姿だが。



「……しかし、軸を飛び越える船を実現させてしまう国があるとは思わなかったな」
「国っつーか種族やね。人の姿しよるけど人やない、確か20人もおらん集団やった筈やに」
「過ぎた力は騒乱を呼ぶ。よくもまあ平和が続くものだ」
「んー、何つーか……説明面倒なんやけど、その船自体が種族やっつーたらどーする?」
「今何て言った」
「船自体がその種族や、て。トランズヴァイヤって言うんやけどね」

今回の被監視者たる眼前の野郎、水瀬禮嗣は一度他の軸の国に行く際にコレに乗船して色々聞いたんだという。
曰く、原初種族のひとつであるトランズヴァイヤは、自由自在に軸と軸とを行き来出来る特殊能力を有している。
だがその能力にも条件があり、『自分ではない他の誰かが望む場所』へ向かう為にしか使えないらしい。
元々知的好奇心とか冒険願望とかそういう気質に溢れた彼等は、能力を使う為に思い切った手段に出たという。

……その手段に出た一人が、今俺達の乗っている帆船というわけか。

「白一色の帆船になったんは双子の兄弟で、セヘトとネギエやったっけな。判別方法は舳先の飾りなんよ」
「……一応聞くがその判別方法とやらは?」
「翼生やした戦女神ならセヘト、羽衣纏った楽の女神ならネギエ。“彼”は後者やったからネギエやね」

奴の説明に応える形か、絶妙のタイミングで汽笛が鳴った。……現在地甲板とはいえ会話筒抜けか。

「虹の国へは3日掛かったけど、この招待状の島なら明日の夕方には着くってさ」
「俺の感覚では早いとは言い難いが……早いのだろうな」
「まー、早いんやとは思うよ? 確かに最短距離ひとっ飛びの方が早いのは当たり前やけど」


最短距離ひとっ飛びが出来なかったのには理由がある。
俺自身には軸を越える力がある。俺の本性はそういうモノだからだ。
野郎もとい禮嗣にも実はその力がある。彼はもう、半分人間の軛より外れた存在だからだ。
だからやろうと思えば二人で最短距離を移動出来た。

……禮嗣の人間としての領域を引き換えにすれば。

彼の力は使えば使うだけ、由来する水の領域が人間としての領域を侵食する。
人ならざる力を使えば使うだけ人ならざる側のモノへとすり替わる。
それだけは、させる訳にはいかなかった。
故に俺とキリエ、ハリィの力で“枷”を作り出し、彼の装備に同化させた。
俺達の力が及ぶ豊穣の国から遠く離れてしまうリスクを最小限に食い止める為に。
多分それでも、いつかは“枷”が使い物にならなくなる可能性も秘めてはいたが……考えたくはなかった。



「おー、イルカイルカー。額に緑柱石嵌まっとるって事はもう別の軸来とるんやねー」
「……いや一寸待ていつ軸飛び越えたいつ!」
「ん、今さっきやないかねぇ。トランズヴァイヤはするりとすり抜けて飛んでしまうさかいに」

帆船と並走して泳ぐイルカ相手に甲板から身を乗り出して手を振る禮嗣の答えに唖然としながらも、
人智を越えた能力を己の他の生命達の為に揮うこの船の温かさと偉大さを知る。
甲板を吹き抜ける潮風は幾分強いが、乗ってる人々が飛ばされたり煽られたりしない程度なのもそのせいか。

「まー、確かに宝玉も気になるっちゃ気になるけどな。でもそれで細工作るのは無理そうやしさー」
「万が一それが実現したらお前の名は島内に響くだろうよ、史上最大の大馬鹿野郎としてな」
「んな悪名とも功名とも分からん二つ名なんぞ要らんわ! ま、とりあえずは楽しむ事やね、ディエ」
「楽しい事ばかりが続くと思うなよ、あの島は人の想像を裏切る事を至上の楽しみとしてるきらいがある」

俺の時もそうだったからな、と付け加え。


……使神(メルクリウス)の俺に神に祈る趣味は無いが。
願わくば、半ば人ならざりし彼があの島で出会う事象全てが、彼を彼として留め置いてくれん事を。
彼の帰りを待つ、縁深き人々の為にも。




……そう、願っていたのに。

“枷”無き今は、最早彼の命運を握るのは他でもない彼自身、だとは。






――Scent of Brine
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
この記事のURL:
忍者ブログ * [PR]